大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和62年(う)835号 決定

主文

本件控訴を棄却する。

理由

記録によれば、被告人は、昭和六二年六月一七日大阪地方裁判所堺支部で本件業務上過失傷害被告事件について有罪判決の言渡を受けたが、同月一八日被告人の母Aが被告人法定代理人親権者として弁護士野村克則を被告人の弁護人に選任し、同日同弁護人が被告人のために右被告事件について原裁判所に控訴を申し立てたこと、被告人は、昭和四三年一二月七日に出生した未成年者であるが、昭和六一年一二月一一日Bと婚姻してその旨の戸籍届出をしていることが明らかである。

右事実によれば、被告人は右婚姻の届出がなされた昭和六一年一二月一一日をもつて成年に達したものとみなされ(民法七五三条)、母Aの親権に服さなくなつた結果、同女は右弁護人選任当時既に被告人の法定代理人たる地位を喪失しており、従つて同女が右法定代理人たる資格においてなした弁護人選任は、被告人のためにその効力を生じないものであつて、その選任にかかる弁護人には被告人のために控訴申立をする権限がなく、また右弁護人選任が被告人の直系の親族たる資格においてなされたものと解しうる余地があるとしても、みずから被告人のために控訴申立をする権限を有しない被告人の直系親族が第一審判決後に選任した弁護人には、被告人のために控訴申立をする権限がないと解されるから(最高裁昭和四四年九月四日第一小法廷決定・刑集二三巻九号一〇八五頁参照)、いずれにしても、弁護人野村克則がした本件控訴申立は、明らかに法令上の方式に違反した不適法なものといわなければならず、他にも本件につき適法な控訴申立がなされた形跡を記録上窺うことはできない。

よつて、刑訴法三八五条一項により本件控訴を棄却することとし、主文のとおり決定する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例